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大阪地方裁判所 昭和26年(行モ)10号 決定

被申立人は原告被申立人、被告申立人間の当庁昭和二六年(行)第二七号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決確定に至るまで申立人が昭和二六年八月八日被申立人に交付した命令の内復職命令を除く部分について申立人の右命令に従うことを命ずる。

申立人のその余の申立はこれを却下する。

申立費用は申立人及び被申立人の平等負担とする。

二、理  由

申立人は「被申立人は原告被申立人、被告申立人間の大阪地方裁判所昭和二六年(行)第二七号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決確定に至るまで申立人が昭和二六年八月八日被申立人に交付した命令の全部に従わねばならない。」との決定を求め、その申立理由として主張する事実の要旨は、Aは被申立人大学の教授、B、Cはその専任講師でいずれも被申立人大学の教職員を以つて組織する近畿大学教職員組合の役員として活溌な組合活動を行つていたものであるが、昭和二六年三月一九日附を以つて被申立人から突如懲戒解雇の申渡を受けた。しかし右A等三名は右解雇の実質上の理由は同人等が労働組合法第七条第一号の労働組合の正当な行為をした点にあると主張し、同人等は同月二二日申立人委員会に対し右不当労働行為の救済を申立てた。そこで申立人委員会は同公益委員近藤文二を中央労働委員会規則(第一号)第四一条第一項の審査委員に指名し、労働組合法第二七条第一項に則り同年三月二二日以降六回の調査、同年四月二七日以降五回の審問を行い、同年七月四日以降三回の合議の結果右A等三名の前記申立を認容し、同年八月八日労働組合法第二七条第二項に基き右A等三名を原職に復職させかつ解雇後復職までの間同人等の受くべかりし賃金相当額を遡及して支払うこと、前項はこの命令交付の日より七日以内に履行することを命ずる命令を交付した。しかるに被申立人は労働組合法第二七条第四項に基いて右救済命令を不服として同年九月三日大阪地方裁判所にその取消を求める行政訴訟を提起したので、申立人は同月一二日中央労働委員会規則第四七条により公益委員会議を招集し、右行政訴訟に対応して労働組合法第二七条第五項の緊急命令を申立てる旨の決定をしたので申立の趣旨のような決定を求めるというのである。

よつて審按するに、労働委員会が労働組合法第二七条第二項に基いて不当労働行為を認定して使用者に対し一定の作為又は不作為を命ずる救済命令(行政処分)を発し、これに対し使用者が同条第四項に基いて行政事件訴訟特例法により行政処分取消の訴を提起した場合には、その判決の確定までには相当の時間を要するのが通常であるから、救済命令の内容が代替執行に適するものであるときは行政処分の性質上行政代執行法により即時にその内容を実現することができるから別段の支障を生じないけれども、その内容が代替執行に適しないものであるときは(例えば本件のように原職に復帰を命じかつ賃金相当額の金員の支払を命ずるもの)その実現を強制する方法がないにもかかわらず、確定判決によつて支持されることによつて同法第二八条の罰則を以つて強制することができるまでこれを放置しなければならないとすれば、自己の労働の対価である賃金を唯一の収入源としている労働者の生活を不安困窮に陥れる等、不当労働行為に対する簡易迅速な救済手続を認めた趣旨に反することになるので、同法第二七条第五項はこの点を救済するため行政処分取消の判決確定までの間の暫定的措置として、受訴裁判所に使用者に対し救済命令の全部又は一部に従うことを命ずる決定(緊急命令)をする権限を与えたものである。そうすると、(イ)前記A等三名がそれぞれ被申立人大学の教授又は専任講師であり、本件記録を通じても同人等が被申立人から懲戒解雇の申渡を受けて以後他に就職したような事実が認められない本件においては俸給生活者としてその生活に相当困窮しているものと認めるに難くないから、前記救済命令中懲戒解雇の申渡のあつた昭和二六年三月一九日以降復職に至る迄の間に同人等の受くべかりし賃金相当額の金員の支払を命じた部分については、労働組合法第二七条第五項の緊急命令を発するのが相当であると認める。しかし(ロ)先に述べたように緊急命令の重点は救済命令取消の訴訟繋属中における労働者の生活困窮を防止するという労働者の経済的利益の保全にあり、従つて主として使用者の不当労働行為に対する労働者保護の実効を確保することを目的とするものであるから、復職命令に対して緊急命令を発すべきか否かについては右の観点を考慮し具体的事情に即してこれを決しなければならない。今本件について考察してみるに、他に特別の事情がない限り、緊急命令を発しこれによつて使用者に対しその違反の場合において労働組合法第三二条の過料の罰則を以つて臨むという心理的強制を加えてまでこれを強制することをしなくても緊急命令の主として所期する労働者の経済的保護に欠くるところがないばかりでなく右のような判決確定までの仮処分である緊急命令による強制は必ずしも本件事態に適当であるとは認められない。もつとも教育労働が教育労働者の全人格的活動と直結した倫理的性質を有するものであるから、普通の労働と異なり教育労働に従事すること自体に多大の精神的関心をもつものであることは認めなければならないけれども、緊急命令制度の趣旨が前記の通りである以上使用者に対し過料の罰則を以て臨むという心理的強制を加えてまで復職を強制することなく、使用者の自発的意思に基く履行を待つ程度で満足すべきであるとしても、教育労働者の就労の利益を無視するものとはいえないから右のような教育労働の特殊性を以つて緊急命令を発しなければならない特別の事情と認めることはできない。そうすると前記救済命令中前記A等三名の復職を命じた部分については労働組合法第二七条第五項の緊急命令を発することは相当でないと認める。

よつて申立費用の負担について民事訴訟法第八九条第九二条を適用して主文の通り決定する。

(裁判官 山下朝一 相賀照之 岩崎康夫)

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